高血圧症は現代人の健康を最もおびやかす疾患のひとつですが、高血圧と指摘されても治療を受けていない人が大勢いること、治療を受けていても十分に血圧が下がっていない人が多いこと、などが問題になっています。
正常血圧と言えるのは、病院や健診などでの測定では120/80mmHg未満、自宅安静時の測定では115/75mmHg未満です。
健診や病院などで測った血圧が140/90mmHg以上、自宅で安静時に測った血圧が135/85mmHg以上なら高血圧として対策をとる必要があります。
また、治療の目標とする血圧は、一般的には、病院での測定では130/80mmHg未満(75歳以上ではまず140/90mmHg未満)、家庭血圧では125/75mmHg未満、とされています。不十分な低下では、将来の脳卒中や心臓病などを予防する効果も十分ではないからです。
血圧を正しくコントロールするには、血圧が高くなっている原因、下がりにくい原因を考え、薬の種類や量を検討する、など、適切な対策が必要です。
血圧が下がりにくい時は?
以下のような点を再チェックします。
1.生活上の注意はきちんとできているか
塩分、酒を控えること、タバコをやめること、体重を減らすこと、などです。特に塩分は、気をつけているつもりの人でも正しく制限できていないことが少なくありません。
2.薬の選択、組み合わせ、量は適切か
患者さんによって効きやすい薬を選ぶ、2種類以上の降圧薬を使用する時は効果の大きい組み合わせを考える、十分な量を使用する、などです。また、患者さんに服薬状況をうかがい、飲み残しがないか、 飲めていない時はその理由はなにか、などを一緒に考えます。
3.血圧を上げるような薬が使われていないか
鎮痛薬や漢方薬などを常用していると、そのせいで血圧が下がりにくいことがあります。この他にも血圧が上がる薬はいろいろあり、他の病院で出されている薬や、健康食品、サプリメントなどとして摂られているものも含めて見直します。
4.血圧を上げるような病気が隠れていないか(二次性高血圧)
特に、若い方の高血圧、家族に血圧が高い人がいない方の高血圧、急に血圧が高くなった場合などには、血圧が高くなるような病気が隠れていないかを一度調べてみる必要があります。
二次性高血圧とは?
一般的には、高血圧でもっとも多いのは、特に原因となる明らかな病気がない、体質による高血圧です(本態性高血圧症といいます)。家族に高血圧の方がおられるような血圧の上がりやすい素因のある方が、中年以後に少しずつ血圧が上がってくる場合などが典型的です。
これに対して、二次性高血圧とは、血圧が高くなりやすい病気による高血圧のことです。血圧が下がりにくい場合は、二次性高血圧の可能性を考え、検査する必要があります。二次性高血圧の場合は、それぞれの原因を治療することで、高血圧を直したり降圧薬を減らしたりできることがあります。
家族に高血圧の人がいないのに血圧が高い、若い時から血圧が高い、逆に高齢になってから急に血圧が高くなった、などの場合には二次性高血圧を疑う必要があります。二次性高血圧は、高血圧症全体の10%以上はあると言われており、決して珍しいことではないのです。本態性高血圧症の特徴に当てはまるような方でも、これから治療を始めるような場合には、一度は二次性高血圧のスクリーニング検査を行います。また、薬をたくさん飲んでいるのに血圧が下がりにくい(治療抵抗性高血圧)場合にも、二次性高血圧の可能性を考える必要があります。二次性高血圧を正しく診断することで、それぞれの原因に応じた治療(薬剤、手術など)を選択でき、効果的に血圧を下げ、不必要な薬を減らすことができる場合があります。
二次性高血圧の原因として多いのは、腎臓病、副腎腫瘍、睡眠時無呼吸症候群、様々なホルモン異常(内分泌疾患)、などです。
二次性高血圧を見逃さないため、診察(血圧左右差、血管雑音など)、ホルモンのスクリーニング検査を含めた尿検査、血液検査、睡眠時無呼吸の簡易検査、などを必要に応じて行います。第一段階の検査で疑わしい結果が出たときは、さらに詳しい血液検査や画像診断が必要になり、場合によっては検査入院も必要です。
イラスト:準備中